Material Reserch #001
BAMBOO Project,
Kagoshima
10.01.2022No. 1
鹿児島県のほぼ中央に位置する姶良(あいら)市までは、鹿児島空港から車で20分ほど。この土地で、柚木一徳さんが竹細工工房を営んで26年。細い「ひご」にした竹を編んだり組んだりして形にする「編組(へんそ)」という技法で竹製品をつくっている。竹林面積が日本一の鹿児島では、日常的に使うザルやカゴを作る技術として竹細工が産業として受け継がれてきた。




柚木さんのお父様はもともと竹刀をつくる職人だった。中国から機械生産のものが入ってくるようになると、手製のものは高価で売れなくなり、編組の竹細工をつくるようになった。しかし、柚木さんはその跡を継いだわけではない。大阪の会社に就職して、やがてご両親の面倒をみるために、奥様の早智子さんさんと地元に戻った。はじめは竹細工をやるつもりはなかったが、「なんでかな」、竹細工を始めるようになった。



「家内もがんばってくれているからね」。柚木さんとともに編組の技術を習得した早智子さんさんと二人三脚で、高知、兵庫、千葉、岩手にある取引先から注文をもらう分だけをつくる。二人でつくれる分しか注文は受けない。他の人に託すこともできなくはないけれど、自分がつくるものと少しでも違ってしまっては、注文してくれた人に悪いと思うからだ。その代わり、自分の編組の技術を人に伝授することは、少しもいとわない。このまま放っておけば、この地域から竹細工の文化がなくなってしまうのを危惧して、市の施設や自身の工房で、若い人たちに向けて竹細工の指導もしている。「私の代で竹細工がなくなるのは嫌やしね。ずっと継承していってほしい」。今どきインターネット上を探せば、いろんな作家がやり方を教えるものはたくさん見つかるけれど、自分の足で山に入り、竹の様子を見て、竹の音を聞いて、竹の質を見極めることの大切さから知ってほしい。柚木さんの口調には、この地の竹林の財産とともに竹細工の歴史がこれからも続くことへの強い願いがこもっていた。