Material Reserch #001
BAMBOO Project,

Kagoshima

10.01.2022
No. 3



「ひごは、いつも、左に向かうものと右に向かうものがあり、必ず、押さえられるか掬われるか」

「左と右」、「押さえと掬い」のルールを頭に置いて、柚木さんの手元を目で追うが、あっという間に頭も目も追いつけなくなる。その間に「六つ目(むつめ)」と呼ばれる編組が現れる。縄文時代の化石から「網代(あじろ)編み」が見つかって、人は縄文時代から竹細工をしていたことがわかっているそうだ。「竹細工は数学的な頭がないとできないから、縄文人はすごく頭がよかったんだなあ」。柚木さんが感心する言葉に深く頷く。



柚木さんが竹を調達する山は4つあり、毎年順番にまわる。そうすることで、それぞれの山で竹の子から竹細工に適している3年目から4年目の竹が育ち、それを見極めて伐採する。それより若い竹は甘くて虫がつきやすいし、6~7年目の竹はもう古いので切って間引く。竹のその見極め方は、竹の音。竹を叩いて鈍い音がすれば若く、高い音がすれば古い。作るものによってどれくらいの太さ、長さ、節間の竹を切ってくるかを頭に入れて山に入る。
この地域に伝わる「鬼火祭り」のための鬼の面も柚木さんが作っている。
「竹は 60年くらいに一度(または120年に一度とも言われる)稲穂のような可愛らしい花を咲かせるんですよ。見つけたらラッキーと思うかもしれないけれど、これは不吉を知らせる花。竹に花が咲いたらその山は一斉に立ち枯れを起こしてしまうから」。地下茎を広げて増える特殊な育ち方をする竹は、伸びるところがなくなると子孫を残すために花を咲かせる。すると一斉に立ち枯れてしまうのだそうだ。竹の花を見つけたらすぐに切ってやること。そう言い伝えられてきたが、人が入る山ならば花が咲いたのを見つけて対処できるけれど、今は放置されたまま手入れされていない山が多く、山ごと立ち枯れてしまう問題が起こっているという。「人間の手をかけてやらないと山がダメになる」。

いつか柚木さんに山に連れて行ってもらって、竹の音の違いを聞いてみたいと思った。
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